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新型コロナウイルスとどう向き合う パーキンソン病患者さんへのメッセージ
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緊急対談
湯浅龍彦 加藤百合枝 
2021/03/26

全国パーキンソン病友の会 千葉県支部だより「菜の花」No.109(2020 年 4 月発刊)
緊急対談

新型コロナウイルスとどう向き合う
パーキンソン病患者さんへのメッセージ

湯浅龍彦 加藤百合枝

はじめに 加藤:新型コロナウイルス感染が世界的な規模で拡散しています。こうした状況に私たちパーキンソン病友の会の会員はどう対処すべきか、鎌ケ谷総合病院湯浅先生からお話を伺うことと致しました。
加藤:先生、まず新型コロナウイルス感染が何かということからお教え下さい。
湯浅:はいわかりました。このウイルスは、元来は風邪ウイルスの一種なので、人間にとってそれ程脅威ではなかったはずです。それが、何かの理由で変異を遂げ、強病原性のウイルスになったのです。同様の事態は、2002年中国広東省から始まった重症急性呼吸症候群(SARS)、2012年の中東呼吸症候群(MERS)などが変異コロナウイルスです。他方、インフルエンザウイルスが猛威をふるった例もあって、1978年のスペイン風邪、鳥インフルエンザ、アジア風邪や香港風邪などがそれです。
そこで、今回のCOVID-19感染ですが、重症の肺炎を起こすのが特徴でCOVID-19肺炎と呼ばれます。昨年、中国の武漢に端を発したこのCOVID-19ウイルスは、現在急速に世界中に拡散し続け、未だ拡散を止めることが出来ず、パンデミック(世界的大流行)の状況にあります。残念な事に現時点では有効な治療薬がないのです。
加藤:先生何故流行がちっとも収まらないのでしょうか?私たちはどう対処すればよいのでしょうか?
湯浅:流行に関わる因子には2つの側面があると思います。一つはウイルス側の要因、もう1つは人側の問題です。守る側からいいますと、現時点では人類はこのCOVID-19ウイルスに対して極めて無防備です。無力といってもよい状態です。といいますのも、COVID-19ウイルスに対する抗体を殆どの人間が持っていないからです。他方、攻めて来るウイルス側の特徴は人類に不利です。まず、COVID-19ウイルスが強病原性を獲得するに至った経緯がいささか不明です。そして本ウイルスの生物学的特徴が十分わかっていない。その為に、本ウイルスを退治する有効な治療薬が現在はないのです。
こうした状況の間隙をぬって、第3の問題が生じています。人類の経済活動
全国パーキンソン病友の会 千葉県支部だより「菜の花」No.109(2020 年 4 月発刊)

や、それに伴う活発な往来に付け込んで、このウイルスが拡散し続けているという社会的現実です。現在の戦況は人類にとって、思わしくありません。極めて感染力が強く、人から人へ容易に感染する一方、初期は密やかに、風邪症状程度で済む。或いは特に若い人では殆ど無症状に見える状況で感染し、拡散する。COVID-19ウイルスの挙動は真に巧妙です。油断させておいて密かに広がる分けです。
加藤: COVID-19肺炎を早期に発見するにはどうすればよいのでしょうか?
湯浅:皆さんとても心配なさっていると思います。COVID-19肺炎の初期症状は、発熱、だるさ、痰のない乾いた咳、息苦しさなどの風邪症状です。そんな中で、COVID-19感染と素早く気づくにはどうすればよいでしょうか。大事なのは冷静に疑うことです。軽い風邪症状があって、加えて、強い嗅覚障害(味覚障害)がある場合は、疑い濃厚です。但し、ここで問題なのは、通常の風邪であってもしばしば匂い障害が来うるわけであり、ましてや、パーキンソン病の患者さんには、元々匂いが落ちている方があります。ですから、初期から強い嗅覚障害がある場合は要注意でしょう。日頃から簡便に出来る自分なりの匂いテストを行なっておきましょう。マニキュア、コーヒー、カレー、納豆、ニンニクなど手近な材料を用いて、程度を軽度、中等度、高度に分けて(自己判断で結構です)記録しておくとよいでしょう。同時に、平素から検温して平熱を記録しておくことも大切です。
匂いテストと検温の組み合わせは自宅で出来ることです。感染していない今のうちから始めて下さい。早期発見に繋がるのではないかと期待されます。こうして、嗅覚(味覚)症状/微熱=肺のCT検査=PCR検査を繋げて行きますとCOVID-19肺炎の早期診断が出来るものと思います。PCR検査が出来ない場合でも肺のCTで特徴的な影があれば、診断できます。
加藤:先生、COVID-19肺炎のリスクについてお教え下さい。そしてパーキンソン病がリスクになるかどうかも。
湯浅:ここでいうリスクには2つの面があります。一つは、易感染性のリスクです。もう一つは、COVID-19肺炎が重症化するかどうかのリスクです。前者はCOVID-19ウイルスの性状に依存します。現時点では、COVID-19ウイルスの感染力は強く、高リスクな、厄介なウイルスです。大勢の人が感染する可能性があります。他方、重症化するリスクは、ある程度制御できる部分があります。
大切なことは重症化を防ぐことです。そのリスクは、高齢者、そして糖尿病患者、癌患者、慢性肺疾患、免疫性疾患を抱える人達です。免疫力の落ちている人。こういう人々では、軽い風邪か、或いは軽い肺炎と診断された人が、数日
全国パーキンソン病友の会 千葉県支部だより「菜の花」No.109(2020 年 4 月発刊)

を経ずしてあっという間に重症の肺炎となってしまいます。そこで、ご質問のように、パーキンソン病が感染リスクになるのかと言いますと現在そうした証拠はないと思います。但し、パーキンソン病患者さんは高齢の方も多い。また、不眠、食細そり、誤嚥して肺炎を繰り返す、運動も不足勝ちで、体力面での問題を抱える傾向が強いので、重症化リスクになるのではと考えて、日頃から日常の過ごし方をきちんと整えて、体力を温存して過ごして頂きたいと思います。
一般的に言われている手洗いの励行、人込みを避ける、マスクの着用などの心がけも重要です。都知事の弁にもあった様に3密(密着、密集、密閉)を避けることとも感染を広げない、罹患しない為にも大切なポイントと思います。
加藤:ところで、新型コロナウイルス感染では、なぜ肺炎になり易いのでしょうか?そして、対処法があるならお教え下さい。 湯浅:COVID-19ウイルスに限らず、一般にコロナウイルスは、鼻粘膜や気道粘膜、肺に存在する「ACE2受容体」という足掛かりを通して感染します。ですからこうした呼吸器関連の症状が多くなる分けでして、肺炎が多くなる理由もそこにあります。
次にCOVID-19肺炎が急速に悪化する理由ですが、まず、肺炎とは何かを理解する必要があると思います。肺炎と一概に申しましても、原因は様々です。例えば、細菌性、ウイルス性、マイコプラズマなどがあります。また、肺炎が起きている現場ですが、通常は、気管支から肺胞(空気の入るブドウの房状の袋)の中の炎症が主体です。ですから黄色い痰が沢山でます。ところが、COVID-19肺炎は、主体が間質性肺炎です。間質とは、肺胞を取り囲む毛細血管があって、肺胞の空気から酸素が取り込まれていますが、それぞれ肺胞間の仕切り部位のことです。ガス交換の現場です。COVID-19肺炎では、その大事な間質が炎症で水浸しとなって、酸素が取り込めなくなるのです。血液の酸素濃度が急速に低下して呼吸苦が現れます。そして一旦始まると急速に悪化しますので(ここは緊急事態です)、酸素投与と人工呼吸器が必要となるのです。
こうした間質性肺炎が急激に悪化する理由はCOVID-19ウイルスに対する生体側の過剰な免疫反応にも一因があるとされます。どういうことかといいますと、コロナウイルスに対して、強く感作されている人では、COVID-19ウイルスの感染を契機として、過剰な免疫反応が生じ、様々なサイトカインなどの障害性の液性因子が放出されて、間質の組織が破壊される(サイトカインストーム)のです。COVID-19肺炎例でステロイド吸入薬が奏功したとの報告もありますが。こうしたサイトカインストームに効果があったのかもしれません。
COVID-19ウイルスに対する抗ウイルス剤の現状は、様々な抗ウイルス剤、抗HIV剤、抗エボラ出血熱剤、抗マラリア剤などが救命の目的として、特例的に少
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数例で使われている状況です。
加藤:最後になりますが、新型コロナウイルス感染への対応を先生はどのようにお考えですか?
湯浅:私自身、70歳も半ばを超し、現在のCOVID-19武漢ウイルスによる騒乱を見ておりますと、真にある意味出るべく時期に噴出した人類への挑戦であると捉えます。人類がこの地球上にあって、他の生物を押しのけて、わがままに振舞って来た。COVID-19禍の前に何があったでしょう、地球の温暖化、海洋汚染、巨大台風、洪水、熱波、森林の消失、絶滅危惧種の増加など、地球の環境バランスが著しく歪んでしまい、そうした中でのウイルスの逆襲ともとれるわけです。
世界の指導者が「これは戦争である」と警鐘をならしたように、このCOVID-19感染とこの武漢ウイルスの本質は現在尚進行形の人類が直面する大禍です。人類が結束して立ち向かわなければなりません。決して油断してはなりませんし、決して侮れる敵ではありません。まずは、しっかりとCOVID-19武漢ウイルスの性状を明らかにし、ウイルスの感染力を如何にすればそぎ落とせるのか、本ウイルスに対する抗ウイルス剤の開発、そして、人の感染防備能の向上と免疫系を含めた生体防御の仕組みの改善を図る。
そうしながらも始まってしまった、COVID-19戦争をどのラインで収めるかの見通しを立てるべきです。ウイルスとの戦いは奥深い、困難な道程となりましょう。しかし、英知を結集すれば、必ず落ち着くべき線に落ち着くはずです。完膚なきまで相手を叩きのめすという道はないと考えます。どこかで、共存する方策を立ててゆかなければならないであろう、人類の生きざまも少しく方向転換をする時期に来たと考えます。
老齢日本に降りかかった今日のコロナウイルス災禍を通して、日々の覚悟を明らかにし、御一人おひとりの英知を結集して解決に導き、世界の人々に対しても、毅然たる態度で希望を与えられる国民でありたいものです。
加藤:先生本日はご多忙の中、時宣を得たお話をお聞かせ頂き、ありがとうございました(本対談は、加藤百合枝の質問から急遽メール上で実施されたものであり、記録編集は岩﨑真樹が担当した)。
事務局:
〒168-0081
杉並区宮前1-20-29
シャンボール高井戸203
gunkojin@gmail.com

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